「その3 Merlion~Tiong Bahru Market」から続く
シンガポール植物園
鹵麺を食べ終わって、シンガポール唯一の世界遺産「シンガポール植物園」へ。
シンガポール植物園は、宮崎市青島にある「宮交ボタニックガーデン青島(旧・宮崎亜熱帯植物園)」と1965(昭和40)年に姉妹植物園になっています。
宮崎偉そうですが、シンガポールの方は敷地面積は約40万平方メートル(東京ドーム13個分)と広大で、青島など足下にも及びません。
しかし、その造園技術や思想を宮崎の当時の植物園関係者が学び、かの宮崎の観光の父・岩切章太郎氏もここを訪れてインスピレーションを得たであろうということで、石田君に連れてきてもらいました。
複数のエリアに分かれていますが、「National Orchid Garden」のみが有料で、大半のエリアは無料で公開されています。
とにかく、広く、美しく、よく手入れされた植物園で、子ども連れなどで弁当持ってピクニックするには最高の場所だなと感じました。
上の写真の奥に白く写る建物は野外音楽堂で、ここを使ってコンサートなどもよく開かれているのだとか。
緑の中に建つ雰囲気の良い白い四阿では、ウエディング衣装のカップルが記念撮影を行っていました。
池の中のオオオニバス。葉の直径1mほど。
リアルな花は初めて見ました。
園内散策の途中、広場にあった柵で囲まれたこの樹は、5ドル札に描かれている樹だと教えて貰ったので、写真に撮りました。
テンブス(Tembus)という種類で、この樹はシンガポールの遺産木(Heritage Tree)に選定されているみたいです。
以前は幹に触ることもできたらしいのですが、今は保護のためか柵で囲われて近づけないようになっています。
後日、石田君が5ドル札の写真を送ってくれたのですが、まさにこの木(枝)でした。
シンガポールは、「ガーデン・シティ」という都市ビジョンを掲げて、快適で清潔な都市というイメージを対外的に発信し、外からの投資を呼び込むことで発展してきました。
最近ではこれを更に進めて、「シティ・イン・ザ・ガーデン」という、都市全体がまるで庭園の中にあるようなイメージを訴える都市ビジョンに変更しています。
その流れの中で、ベイ・サウス・エリアにガーデンズ・バイ・ザ・ベイやマリーナ・ベイ・サンズといった広大な庭園と巨大建造物の未来的な景観が造られています。
こうした流れの源流が、このシンガポール植物園にあり、かつて「大地に絵をかく」と言って宮崎の景観づくりに邁進した岩切章太郎氏も、この地に少なからず影響を受けたのだろうと思います。
今、観光面ではインバウンドの増加を目指す宮崎ですが、当時の原点に戻って、景観づくりを見直す時期に来ているのかもしれないなと、園内で感じた次第です。
小休止
早朝に空港に着いてから植物園まで、荷物を石田君の車に積みっぱなしのままだったので、泊めてもらうことになっている石田君のマンションに荷物を置きに戻ることにしました。
シンガポールの繁華街オーチャードにも近い、便利なところにありました。
1階にはプールやトレーニングジムもあり、コンシェルジュが常駐するという高級マンションの10階に石田君の部屋があります。
ゲストルームにトイレとシャワーも付いているという充実ぶり。
荷物をほどき、シャワーを浴びて着替えてからしばし小休止。
眼下では、新しくできるという地下鉄駅の工事が進んでいます。
小休止終わって、再びでかけることになりました。
次は、地下鉄に乗っての移動になるので、石田君がチャージ済みのez-Linkカードを貸してくれました。日本で言うところのSuicaやPASMOみたいなものです。
何から何までお世話になりっぱなしで申し訳ない。
library@orchard
石田君と事前に行きたい場所を打合せしていた際に、「図書館はいいの?」と聞かれました。
流石は級友、私が社会教育論専攻で、図書館の勉強していて、卒業後も図書館のことばかり言い続けていたことをよく覚えていてくれてます。
ということで、石田君のマンションから最寄りの地下鉄駅「Somerset (サマセット)」に徒歩で向かう途中、「Orchard Gateway(オーチャード・ゲイトウェイ)」という駅に直結したビルの3階と4階にある「library@orchard」に案内されました。
ここは、国立図書館の27ある分館のひとつになりますが、シンガポールは都市国家なので、日本だと市町村立図書館レベルの、住民への直接サービスをメインとする図書館と考えて良さそうです。
3階は「STUDIO」と呼ばれるエリアで、入口から奥へ進むと、左手には雑誌がずらりと並んでいます。
ざっと見ても200種はありそうで、なかなか壮観です。
雑誌架の反対側には、このようにガラス張りの学習室やイベント用のオープンスペースがあります。
奥へ進むと、4階の天井まで吹き抜けになったスペースに書架が配置されていました。
白を基調として、曲線を描くように作られた書架で、見通しは悪いのですが、デザインとしては面白いと思いました。
壁際は、9段ある高書架。
写真の奥に、高い場所にある本を取るための移動式のはしごが見えます。
書架の配置は、上から見た写真の方がわかりやすいですね。
4階に上る階段の踊り場から撮りました。
小説の書架の配架ラベルは、こんな感じで貼られていました。
「KUZ」というのは著者名(この場合はKuzneski)の頭3文字で、その下にある赤い銃のマークは、ジャンル(この場合はミステリーでしょうか)を表していると思われます。
4階へ上がる階段の下のスペースも有効に利用してCDやDVDが収納されています。
ここも白を基調として、曲線を生かしたデザインで統一されています。
横向きに並べるというのは、背ラベルが縦書きの日本では無い発想だなと思いました。
モダンでスタイリッシュな感じですよね。
一角には、階段状になったフリースペースがあり、利用者が思い思いに陣取っていました。
ここも、上から見るとこんな感じ。
場合によっては、ここでちょっとしたイベントが催されたりするのかもしれません。
4階は「LOFT」と名付けられたエリアになっています。
窓際には、こんな風に外を向いた椅子が。
書架の間のところどころには、こんな感じで視線を遮ることの出来る個室ブースもありました。
なんかイモ貝みたいで、波打つ書架といい、海のイメージを感じました。
4階に設置されていた書架。
側面に面展示できるスペースがあり、その上部に「Lifestyle」という文字、下部にピクトサインがライトアップされていて、収納された資料のジャンルがわかるようになっています。
これもオシャレ。
出入口付近に置かれていた自動貸出用の端末。
BDS(Book Detection System)のゲートまでオシャレ。
東京で言うなら銀座のような繁華街のビルの中にある「library@orchard」は、全体がきちんとデザインされていて、オシャレで流行の先端という感じ。
利用者も、若い世代が多い感じがしました。蔵書構成もおそらくそういう世代向けになっているのかもしれません。
それにしても、クリエイティブな刺激を受けることのできた図書館でした。
National Library
続いて地下鉄で「Bugis (ブギス)」に向かい、そこから歩いてすぐの「National Library」へ。
地下1階、地上13階の建物全てが国立図書館とその一部門の公文書館で、7~13階は「Lee Kong Chian Reference Library」という調べ物専門の図書館、それ以外が「Central Lending Library」(公共図書館)になっているようです。
この日は時間も無かったので、地下1階にあるパブリックスペースへ。
こちらは、「library@orchard」と違って、書架の配置などもシンプル。
利用者も多く、どこにカメラを向けても利用者がしっかりと写り込んででしまうので、ついつい写真を撮るのを遠慮してしまいました。
そんな中でも目に付いたのが、子ども室の入口。
ここまでデコラティブに作り込んだところは、日本でもなかなかないでしょう。
子どもはわくわく喜びそう。
子ども室の中央には、天井まで枝を伸ばす樹を模した一段高いスペースがあり、上がって絵本を広げたりできるようになっていました。
天井や床のカーペットは緑色基調にまとめられていて、室内全体が森の中をモチーフにしているようです。
しかし、子どもも連れずにおじさんがひとりカメラを構えている図は、利用者にとって怪しいだけなので、通報される前に早々に退散しました。
館内をぶらぶらしていたら、外国文学の書架で『図書館戦争』(有川浩著)の中国語版を発見。シンガポールでこの世界がどのように読まれているのか興味深い。
この書架の近くには、世界各国のマンガを集めた書架もありました。
こちらは写真の上部に見える「eNewspapers」の文字からわかるように新聞閲覧コーナー。
紙の新聞ではなくて、閲覧用のPC端末が並んでいるところが時代を映していますね。
地下のパブリックスペース自体はさほど広いわけではありませんが、それなりに利用者も多く賑わっていました。
国立図書館としての役割は、もっと違うところにたくさんあるのでしょうが、この日はこれでおしまい。
次は、ちょっと遅めの昼食に向かいます。
それにしても、石田君から、
「植物園ではほとんど花の写真撮らんのに、図書館だと撮りまくるのぉ。日高らしいわ。」
と言われてしまいました。司書の性ってやつですかね。